【茶畑だより】霧島茶畑レポートvol.1 おいしいオーガニック茶葉が育つまで

二番茶の茶摘みのピークを迎える初夏、Cuzen Matchaの日本とアメリカチームのスタッフ数名で、鹿児島県 霧島の山奥にある茶畑と製茶工場を訪問してきました。茶葉の生産者さんにお聞きしたお話を交えながら、有機茶葉の育成からおいしい抹茶が届くまで製茶の工程について茶畑訪問レポートをお届けします。

目次

  1. 約20年前に有機栽培をスタート
  2. 有機栽培でありながら、品質も・生産性も妥協しない
  3. 環境を育むサステイナブルサイクル
  4. 生産者さんの想いに触れて

1. 約20年前に有機栽培をスタート

日本の茶葉の栽培面積のうち有機栽培のお茶づくりは、たったの6%ほどといわれています。オーガニックのお茶に対する認知は、海外を中心に日本でも少しずつ高まっているものの、まだまだ希少なのです。Cuzen Matchaでお届けしているオーガニックの抹茶リーフを育ててくださっている鹿児島県 霧島の生産者さんが茶葉の有機栽培をスタートしたのはなんと、今から約20年前。お客様のニーズに合わせて有機栽培をはじめることにした、とのこと。

日本の有機の規格(有機JAS認証)もまだなかった当時、オーガニック茶葉の栽培はかなり珍しく、周囲の反応は厳しく、なかなか理解を得られなかったそう。農薬を一切使わずに茶葉を育てるということはその分、人の手をかける必要があり、さらにオーガニックでうま味のある茶葉を育てるのは試行錯誤と挑戦の連続なのです。

「農薬の使用をやめると、虫に食われて収穫が 2割程落ちてしまうのですが、かといって2割高く売れるというわけじゃない。」

「虫に食われても農薬を使わずに我慢できるかどうかが有機栽培を続けられるかの肝なんです。」

  • A large container full of tencha leaves. Rows of tea plants stretch into the horizon on the Kagoshima tea farm.
  • A ladybug sits on a tencha leaf at the Kagoshima tea farm.

有機栽培=我慢すること。その期間を耐えられずに、有機栽培をあきらめてしまう農家さんも多いそう。

「有機栽培に切り替えると、きちんと収穫ができるまで2~3年はかかります。」

「逆に、そこを我慢して3年を超えると、害虫が減り、益虫が増えて、茶畑の生態系が出来上がって、茶葉の育ちが安定し始めます。」

一面に広がる鮮やかな茶畑。空に向かって力強く葉を広げる茶の木を前に、

「有機栽培は、我慢すること。」

そう力強くお話しされていました。

2. 有機栽培でありながら、品質も・生産性も妥協しない

「有機栽培をやりながら、需要に応えていくために生産性も重視しています。」

「だから通常の3倍くらい観察し、結果 、3倍くらいの労力をかけてやっているんです。」

うまみ成分であるテアニンを豊富に含む碾茶(てんちゃ:抹茶の元となる茶葉)は、人間にとっておいしいと同時に虫にとってもおいしいのです。つまり、「農薬を使わずに、うま味のある高品質な茶葉を育てる」というのは二律背反する理想への挑戦。オーガニック栽培・うま味・品質・生産性。どれも一切妥協せず、理想のお茶づくりを追求し、茶葉の育成から製茶の過程に至るまで、様々な工夫や試行錯誤がなされていました。

例えば、抹茶特有のうまみを引き出すための被覆栽培(ひふくさいばい)で使用される茶畑を覆っている銀の覆い。

一般的に、黒の覆いを使用することが多いそうなのですが、こちらで使用しているのは、表が銀、裏が黒という特別なものなのだそう。 

  • A farmer adjusts a silver cover over the leaves of tea plants that will eventually be used to make matcha.
  • Tea leaves pop up between rows of shaded tea plants on a Kagoshima tea farm.

「銀の覆いで遮光すると、熱を反射し、温度を低く保ってくれるため、熱がこもりにくい。温度が低い方が硬化しにくいので、柔らかいまま成長してくれます。」

「通常の黒の覆いと比べると、5倍以上の値段ですが、茶葉のおいしさにこだわって、私たちはこちらを採用しています。」

3. 環境を育むサステイナブルサイクル

スプリンクラーは、ため池からポンプで水を汲み上げて散水。水をまくことで虫のコントロールにもつながるそうです。霧島山のふもとは地下水が豊富なので、自分たちで井戸を掘り、霧島山の地下水を使い、有機肥料は、配合肥料だけでなく、魚かすや菜種などを単肥で取り入れ、自分たちで配合。土づくりに欠かせない堆肥(たいひ)は、半年先、一年先を見据えているそうです。

「肥料には窒素が重要。農業は科学なんです。」と茶農家さん。

機械を自分たちで改造したり、必要なものは手作りすることも多いそうです。

農薬を一切使わずに茶葉を育てながら、おいしさも妥協しない。オーガニックでおいしいお茶づくりへの理想を追求する情熱と試行錯誤を重ね、挑戦し続けている姿は、まさに有機茶葉栽培のパイオニアです。

  • A bright blue reservoir on the farm is used to irrigate the tea plants.
  • A huge pile of organic compost, which will be used to feed tea plants on the Kagoshima farm.

4. 生産者さんの想いに触れて

そして、炎天下の中の作業でも、イキイキ働かれているスタッフの皆さんの笑顔。事務所では、そんなスタッフの方をまるで家族のように朝・昼・晩と、栄養満点の彩り鮮やかな手料理で迎えるお母さんの存在。そんな温かな雰囲気がとても印象的でした。

実際の茶畑を訪れ、生産者さんの想いに触れて、おうちでいただく一杯の抹茶が、ますます美味しく感じられそうです。いかがでしたか?

鹿児島県霧島の自然豊かな茶畑の様子や生産者さんの想いを少しでも感じていただければ嬉しいです。

次回は、茶畑訪問レポートvol.2「製茶の工程」についてお届けします。