日本人書家、山口碧生さんとの対話

抹茶マシンSUMIブラックの発売に携わり、デザインに深みを与えて下さった日本人書家の山口碧生さんは、幼少期から書道を学び、依嘱作家佐藤瑞鳳氏に師事。伝統の枠を超えて、世界で活動されています。パフォーマンス・音楽・墨の香り。その情熱についてお話を伺いました。

出身地: 日本、北海道

現住所: カリフォルニア州ベニス

CUZEN MATCHAのお気に入りのレシピ: 抹茶ラテ

山口碧生さんの公式ホームページ

目次

  1. はじまり
  2. インスピレーションの源
  3. リズムと色彩のプロセス

1. はじまり

A: 私の名前は山口碧生です。日本人書家です。

C: 書道に初めて触れたときの記憶はありますか?

A: 母が私を北海道の田舎にある書道教室に連れて行ったのが初めての出会いです。その時のことを今でも覚えています。教室のドアを開けると、「墨」の独特な香りに包まれました。その瞬間を今でも忘れません。墨の香りが今でも大好きです。

墨は燃焼した松の煤でできており、その香りは非常に強く、服に染み込み、部屋全体に広がります。墨を硯に注ぐと、香りが一層強くなり、背筋が伸びる思いがします。

師匠の佐藤瑞鳳先生とカホウ先生の下で学んだことは懐かしく、今なお心揺さぶられる思い出です。素晴らしい先生方で、自宅を改装した教室で30人かそれ以上の子供たちに書道を教えていました。

書道と先生方が教えて下さったこと、書道そのものが私に人生について教えてくれたことに本当に感謝しています。それは忍耐と粘り強さ、そして誇れる作品を作り上げるまで諦めない精神です。今でも作品を納得いくまで何百回、何千回と書き直します。

  • Calligrapher, Aoi Yamaguchi, stands in front of her brushes and a piece of her artwork, in her studio.
  • A calligraphy piece by Aoi Yamaguchi, entitled “Meditate” hangs on the wall behind a table display of brushes, ink and other equipment in her studio.

C: 書道を追求しようと思ったきっかけは何ですか?

A: 人生の中で二つの転機がありました。

六歳で書道を始めた時、先生方はとても厳しく、完璧でバランスの取れた文字を書いていました。高校に入ると、とても自由な精神で書道にアプローチする書家の先生に出会いました。彼は生徒たちに詩や歌詞を持ち込んで共有することを勧めました。

私は幼い頃から詩を書くのが好きで、文学や音楽もとても好きだったので、そのアプローチに非常に共感しました。書道はただ美しく文字を書くことだけでなく、自己表現の手段であることに気付きました。好きな言葉や引用文、そして自作の詩も書き始めました。

二つ目の転機は大学を卒業した時でした。自分のキャリア、人生で何を成すか、自分にしか出来ないことは何かを決める必要がありました。

その折、14歳で私が文部大臣賞受賞の報告したときに、佐藤先生がおっしゃった言葉を思い出しました。「碧生ちゃん、こんな素晴らしい賞が頂けたということは、これからもずっと書道を続けなさいと言われたことと同じ意味なんだよ」と。進路を模索していた時、その言葉が頭に浮かびました。

2. インスピレーションの源

C: インスピレーションはどこから得ていますか?

A: 音楽、自然、詩からインスピレーションを得ています。幼い頃から音楽がとても好きで、小さい頃からピアノを習っていました。音楽を聴くと、墨と筆が音楽に乗って空中で踊るようなイメージが浮かびます。まさにダンスのように。言葉が心に降ってきて、それが詩になります。忘れたくないのでノートに書き留めています。多くのノートがそういった言葉とビジョンと空想の産物で埋まっています。

また、多くのミュージシャンとコラボレーションしています。かつてダンスもしていたので、音楽や音や動きが体に染み付いています。書くときには、例えば、1画目のストロークについても1、2、3と流れと動きがあります。文字にはリズムがあり、私はその文字特有のリズムに従って書いています。そのエネルギーと動きを感じて最終的な作品にします。

  • Aoi Yamaguchi opens for a San Francisco “ikebana” exhibit with a live calligraphy performance accompanied by a “shakuhachi.”
  • A performance-goer for a San Francisco “ikebana” exhibit admires a huge calligraphy piece, painted in-person by Aoi Yamaguchi’s during the event.

自然も大きなインスピレーションの源です。私は北海道の美しい自然の中で育ちました。日本にははっきりとした四季があって、四季の移ろいとともに風景の色彩や気温が移り変わります。

春には全ての生命が息を吹き返し、桜が咲き誇ります。その美しさに心躍り、詩を作りたくなります。四季にインスピレーションを得て詠む俳句や短歌と似ています。自然の中にある美しさが私を刺激します。

3.リズムと色彩のプロセス

C: CUZEN MATCHAの抹茶マシンSUMIブラックのデザインを概念化し、実現するプロセスはどのようなものでしたか?

A: 「墨色」という言葉を書いてほしいと依頼されました。墨は書道に使うインクで、一般的には黒を指します。

しかし、黒にはさまざまな色合いがあります。私の作品では、その色合いの違いを探求しています。例えば、「淡墨」というのこの「墨汁の薄い灰色の色合い」を指しますが、書家が凝縮された墨と水を異なる比率で混ぜて作ります。墨で作り出すことの出来る深い濃淡を探るプロセスが私はとても好きです。

墨の色合いと抹茶マシンSUMIブラックが最も調和する組み合わせを見つけることを楽しみました。抹茶マシンの色はピッチブラックやシャイニーブラックではなく、マットなチャコールのような暗い灰色です。

私の書道における黒の色が、抹茶マシンの色とどう呼応するか、その関係は非常に重要でした。お互いに対立することなく、かといって混ざり合うこともなく、美しく共存しながら良いコントラストを提供したいと思いました。

そこで、書道辞典で「墨」や「色」を調べ、このビジョンに合う書き方を探し始めました。

  • Rows of the words “sumi iro,” or “the color of sumi,” line a worktable in calligrapher Aoi Yamaguchi’s studio.
  • A shot of Aoi Yamaguchi’s artfully-arranged calligraphy studio, displaying lines of calligraphy brushes, ink pads and more.

次に、CUZEN MATCHAのイメージを考えました。抹茶マシンは非常にクリーンな幾何学的ラインを持っており、書道はそのクリーンなラインに対してコントラストとなるように、もう少し有機的で流れるような感じにしたいと思いました。

抹茶ラテを作るイメージが浮かびました。抹茶が温かいミルクに滴り落ち、抹茶が渦を巻くような、そんな動きと有機的な流れを表現したかったのです。

スケッチブックにいくつかのアイデアを描き、それをチームと共有しました。そして、全体的な書道デザインを決定しました。その後、墨を使っていろいろな試行を行い、異なる色合いの淡墨も作成しました。いくつかのバージョンを書いてみて、抹茶マシンSUMIブラックに最も合うものを見つけました。それは本当に美しいものでした。

  • The Matcha Maker Sumi Black, flanked by Aoi Yamaguchi’s calligraphy, which reads, “the color of sumi.”